バラの美術館 ROSEUM ロージアム

バラと私

デビッド・J・C・オースチン

第12回国際バラとガーデニングショウ(2010年5月12日〜17日/西武ドーム)のため来日していたデビッド・J・C・オースチン氏に、お話しをうかがいました。

バラと離れた10年間が私に大切なことを気づかせてくれた

デビッド・J・C・オースチン氏「グラハム・トーマス」と
デビッド・J・C・オースチン氏

―幼いころからバラに囲まれて育ってきたと思いますが、今のお仕事に携わるようになった経緯を教えていただけますか

特にロマンチックなストーリーがあるわけではありませんよ(笑)。 
ずっと近くで父を見てきて、父の仕事には関心を持っていましたが、私はビジネスにも興味があり、何か起業をしたいという気持ちもありました。大学もビジネス専攻でした。
大学卒業後、3年間父と一緒に働いていました。当時は、経理・マーケティングから雑用まで、何から何まですべてをやっていました。その3年間はとても充実していましたが、一方で物足りなさも感じていました。他のビジネスも経験してみたいという想いから、その後10年間、別の仕事をしました。そして、再びデビッド・オースチン・ロージズ社に戻ってきたのです。


―10年間も離れていたのですね

小さいころから野菜や花を育てていて、ガーデニングには興味がありました。しかし、自分の興味がどれだけのものか、他と比較したり、客観的に考えたりすることはありませんでした。それが、10年離れることで、自分がどれほど興味を持っているのかが分かったのです。我が家は3人兄弟で、みんなガーデニングが好きですが、その中でも私が一番でした。
あえて10年間離れたことによって、ガーデニングに対する興味とビジネスに対する興味が、常に並行して私の人生の中にあったということにはじめて気がついたのです。これには私自身も驚き、とても興味深く感じましたね。最初にデビッド・オースチン・ロージズ社にいた3年だけでは分からなかったことですから。

私のガーデンは、当初1.5エーカー(約6070u・1836坪)でしたが、今は2.5エーカー(約10120u・3061坪)の広さがあります。そこで野菜や花を育てています。デビッド・オースチン・ロージズ社のカタログには、私のローズガーデンを使った写真がたくさんあります。それだけ良いものを作ってきたという自信もあります。


私と父の美意識は一緒。個人的な好みはあるけれどね

ダーシー・バッセル

―育種にも関わっていらっしゃるそうですが、親子で美意識の違いのようなものはあるのでしょうか

私と父は毎日のように意見交換をしています。美意識という点では、父と私は非常に似ていますね。ほとんど一緒といってよいのではないでしょうか。
育種に関しては、もちろん私も重要な部分を担っていますが、なにしろ父があれだけの人ですから(笑)。父はもう83歳になりますが、庭に出ない日はありません。育種に関しても毎日欠かさず何らかの指示をしています。毎年15万の苗を育て、10年間かけて6種類程度に絞り込んでいくのです。ものすごいパワーと情熱の持ち主です。


―デビッド・オースチン・ロージズ社には約200品種ものイングリッシュ・ローズがありますが、その中でもお気に入りの品種はありますか

バラを好きな人はみなさんそうでしょうが、それぞれにみんな良いところがありますから、どれか一つを選ぶということは難しいですね。それは、自分に息子と娘がたくさんいて、どの子が一番好きかと尋ねられるようなものですよ(笑)。
個人的に興味があるものとして挙げるなら、色では「ダーシー・バッセル」のような非常に濃い赤のもの。また、香りも重要な要素で、「ワイルド・エドリック」はとても好きな品種です。カップ咲きのハマナス系の花で、ムスク系の香りが実にすばらしい品種です。
ほら、ちょうどあそこにありますから花と香りを楽しんでいってください。


バラは限りない可能性をもって、これからも発展していく

グラハム・トーマス

―今後どのようなイングリッシュ・ローズを世に出していきたいと考えていらっしゃいますか

あらゆる方向で考えていますが、ひとつはつるばら系のものです。「グラハム・トーマス」や「ジェームズ・ギャルウェイ」といった、今の段階でもつるばらとしても使えるイングリッシュ・ローズはありますが、新しいつるばら系のイングリッシュ・ローズを作っていくことが大きな課題だと思っています。様々な試作に取り組んでいますが、試作の段階でもそれぞれに大きな成長の違いがあります。その中で、今後どのようにして展開していくかが重要ですね。


―バラは色もかたちもいろいろなタイプが毎年作りだされています。今後はどのような方向に発展していくとお考えですか

人間が一人として同じ人間がいないように、バラもひとつひとつがすべて別のものです。これからもまだまだたくさんの品種が出てくるでしょう。たとえば、シュラブタイプ、クライミングタイプ、ブッシュタイプ、さらに樹形や花形、色を掛け合わせていったら、ものすごい数になっていきます。これからも、限りない可能性を持って新しいバラが次々と生み出されていくことでしょう。


日本のみなさんがイングリッシュ・ローズに寄せてくださる愛情に感謝しています

―日本ではイングリッシュ・ローズが注目を集め、ブームとなっていますが、どう思われますか

とても喜ばしいことです(笑)。
ガーデニングをしていると、形や色や香りをゆっくりと楽しみながら、時間がとてもスローに流れていきます。現代社会は、何事もスピードが早く、目まぐるしく変化していますね。このような時代だからこそ、バラを育てるゆったりとした時間と、バラの美しさや香りがもたらしてくれる癒しが求められているのでしょう。
また、日本のみなさんは、美しいものに対して共鳴する力が非常に強い、バラのような美しい植物やものに対する感受性がとても豊かだと感じます。


―日本人には広い庭を持っている人は少なく、小さなスペースで楽しんでいます

小さなスペースでも楽しめるのがバラの良いところでもあります。どんな環境にも、どんな場所にも適した品種、さらにどんな人の好みにも合う品種が必ずあります。2.5エーカーのローズガーデンでも、たった一鉢だけのバラ鉢植えでも、大切に育てている愛情や情熱に変わりはありません。バラを育てる喜びの大きさは同じなのです。


―日本のイングリシュ・ローズファン、バラの愛好家たちにメッセージをお願いします

個人的にも日本は大好きで、いつでも来たいと思っています。
日本のバラ愛好家のみなさんはバラに対してとても強い情熱をもっています。世界中でも、これだけ情熱を注ぐ人たちは、他にいないのではないかと思います。
特にうちの父親がそうですが、日本のみなさんが、私どものイングリッシュ・ローズをとても愛し大切に育ててくれることは、育種に対するとても大きな力となっています。そのことを心から感謝しています。

(2010.06.04 掲載)

プロフィール

デビッド・J・C・オースチン

デビッド・オースチン・ロージズ社の経営を一手に担う一方で、バラを使ったガーデンづくりの専門家としても多方面で活躍。自ら手掛けたプライベートローズガーデンは、自社のカタログに使用されるだけではなく、多くのメディアに取り上げられている。父親は、世界的に有名なバラの育種家であり、栽培家・著述家でもあるデビッド・C・H・オースチン。

デビッド・オースチン・ロージズ株式会社

http://www.davidaustinroses.com/

1969年創立。
オールドローズとモダンローズぞれぞれの優れた点を融合させたイングリッシュローズの第一号である「コンスタンス・スプライ」(1961年)以来、これまで約200品種のイングリッシュローズを発表。チェルシー・フラワーショーでの14のゴールドメダル受賞はじめ、世界中の品種コンテストで数々の受賞歴を持つ。2009年には、「グラハム・トーマス」が、世界バラ会連合により、世界中で愛されるバラとして「バラの殿堂入り」を果たした。

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